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  • 【vol.14】『御神火』と『神迎え』

    【vol.14】『御神火』と『神迎え』

    コロナ、戦争、地震・・・激動の世界情勢の中で、「自分に何ができるのだろう」と日々考えます。

    その都度、自分の非力さを思い知らされますが、いきつくところはいつも、自分にできることで世界に貢献するしかない、です。

    この写真は、隠岐諸島の島前の知夫里島、西ノ島、中ノ島の3島をつなぐ内航船から撮ったものです。夕暮れどきの美しさはまた格別です

     

    今の私には、Japan Craft Bookをつくることがその一つだと真剣に思っています。本の力を信じているからです。

    「本」は単なる物質でありながら、手にした人に語りかけ、時空を軽々と越える扉を持ち、時に親友のような存在ともなります。実に面白いものだと思います。

    心が荒んだ時、不安でいっぱいな時、恐怖で身体が動かなくなった時、あたたかい一杯のお茶に救われることがあるように、手のひらにのる一冊が誰かの心をあたため、そこに神様が宿ることを信じて、さあ、世界へ飛んでいけ!とばかりに、ただいま制作中です。

     

     

    デザイナーの谷さやさんが、小さなサイズで見本をたくさん作ってくれました。

    どの絵をメインにもってくるのか、全体のページ数はどれくらいがベストか、横長と縦長のどちらのレイアウトがきれいなのか、文字はどこに配置すると良いのか。形にしてもらうことでわかることがたくさんあります。

    そして、ベースとなる紙の色は何がいいのか、和紙をどう使うのか・・・。一つ一つ検証していきます。

     

     

    私が谷さんにお願いしたことは一つ。

    「これまでの本づくりの常識にとらわれないで欲しい」でした。

    あくまでも“Japan Craft Book”であり、言葉にこそしませんでしたが、私の中で大事にしたいのは、佇まいと手触りでした。

    谷さんはそれを見事に汲み取って、進めてくれています。

     

     

    そして、いろいろと検討した結果、焼火神社の縁起をもとにした『御神火』と、隠岐島前神楽をもとにした『神迎え』の2冊を、同時に制作することになりました。

    どちらも和紙をふんだんに使った「特装版」と、手にとっていただきやすい価格帯のもの、その2パターンを作ることにしています。材料費、印刷費など、当たり前ですがシビアな現実にも向き合っています。

     

    画家の水野竜生氏とデザイナーの谷さや氏

     

    そしてなにより、地元の方、今回であれば隠岐に暮らす方々に愛される本を作りたいと思っています。とはいえ、「愛されるとは・・・」を考えると非常に難しく、まだまだ試行錯誤が続いています。

     

    Japan Craft Bookプロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

     

    ーつづくー

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  • 【vol.13】感得する。紙に宿す。

    【vol.13】感得する。紙に宿す。

     

    Japan Craft Book のコンセプトは

    「日本の神様の物語を、日本の紙に綴る、描く」です。

    あらためて「コンセプト」を辞書で調べてみると、「貫く基本的構想」とありました。まさにその通りで、基本的構想という言葉が実にしっくりときます。その構想を貫きながら、只今、本作りを進めています。

    そして、「神様の物語」というと、どうしても古事記や日本書紀の世界を描くと思われがちなのですが、Japan Craft Bookではその地に宿るもっと根源的なエネルギーのようなもの、また、その地で古くから語り継がれている縁起や伝承を大切にしたいと思っています。

     

    大袈裟な言い方かもしれないのですが、人がその場に立って感得する「何か」を、紙に宿すことができたら、それはとても素敵なことだとイメージしています。ですから、その紙にもこだわる必要があり、力のある「和紙」にいきつくのです。

    ちなみにこの写真は、画家の水野竜生先生が焼火神社で描かれた10メートル作品の絵です。

     

     

    現在、この絵は隠岐諸島西之島にある旧美田小学校の一室に保管されています。大正14年に建造されたこの木造校舎は今、地域のコミュニティーセンターとして活用されていますが、とても気持ちのよいところです。映画のロケ地にもなりそうな場所です。

     

    コロナのこともあり、この絵は一般公開していないのですが、私はこれまでに2度、ありがたいことに静かに向き合う時間をいただくことができました。普段は誰も入ってこない閉ざされた教室という空間の中で、この10メートル作品は、大きな息遣いをしながら確かに「いる」と感じました。

    「ある」ではなく、「いる」という感覚です。

    そんな風に感じ取ったものを、本という形を通して届けられたらと考えています。

     

    【本作りの進捗状況2】※1はこちらより

    前回のメルマガで「今回の本に、言葉は本当に必要なのだろうか?」と書きました。

    圧倒的な力を放つ絵を前に、私は綴る言葉を見つけられずに、ずっといたのです。

     

     

    ただ、焼火神社には古くから語り継がれている「焼火権現縁起」があります。それを何度も読み返しているうちに、ただその縁起を忠実に綴る、伝える、それこそが価値のあることではないかと次第に思うようになりました。冒頭にも書いた通りです。

    焼火の縁起は「一条天皇の頃に・・・」と始まるお話ですから、平安時代に遡ります。自分の言葉で何かを新たに紡ごうとする必要はなく、こねくり回す必要もなく、現代の言葉にしてわかりやすく伝えるだけでよいのだ、そう心から思えたときから、流れが大きく変わったように思います。

     

    要は、かっこいい言葉を綴りたい、どこか褒められたいという我欲に囚われていたのだと、恥ずかしながら気付きました。

    現在はその縁起を綴った原稿をベースに、デザイナーの谷さやさん、製本をお願いする篠原紙工さんを中心に、どういう形にしていくのがよいかを試行錯誤しながら、進めています。

     

     

    Japan Craft Bookプロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    ーつづくー

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  • 【vol.12】水野竜生10メートル作品のパワー

    【vol.12】水野竜生10メートル作品のパワー

     

    隠岐島滞在の一番の目的は、焼火神社の例大祭に参加し、お神楽を拝見することでしたが、私にはもう一つ楽しみがありました。それは、画家の水野竜生先生がこれまでに隠岐で描かれた10メートル作品の数々を実際に見てみたい、というものでした。

     

     

    そして今回特別に、海士町在住のデザイナーでアートディレクターでもある南貴博さんのご配慮により、それらを一挙に拝見することができたのです。

    以前のメルマガにも書きましたが、南さんご夫妻と水野先生は南さんが東京から隠岐に移住される前から親しくされており、「先生、隠岐に一度遊びに来てくださいね」と南さんがお声かけされなければ、あの焼火神社での絵は生まれていなかったという経緯があります。

     

    また南さんは、今回の本のデザインを担当してくださる谷さやさんの先輩でもあります。私が初めて一人で隠岐に行った時にも、焼火神社の松浦宮司にすぐお目にかかれるよう案内してくださったのが南さんでした。

    そう、南さんは今回のプロジェクトに欠かせない重要なキーマンでもあるのです。その上、才能豊かでお人柄も素晴らしいところも強調しておきましょう^ ^

    https://note.com/minamidesign/

    なにごとも人のご縁なくして事は進まず、損得なしに、人の喜ぶことを率先して、しかも楽しくやれる人が結果として福を呼ぶことになるのだと、今回のプロジェクトを通して、私は関係者の皆々様から教えていただいています。

     

    さて、その南さんが海士町で運営されているコワーキングスペース「喜多屋」さん(https://www.kitaya-ama.com/)にて、作品を見せていただきました。

    喜多屋さんの目の前はすぐに海。早速外に出て10メートル作品をまずは1本広げていただきました。

     

     

    なんという迫力!!

    こんな風に「絵」を楽しんだのは初めてでした。自然の中で彫刻を鑑賞することはあっても、太陽と心地よい潮風の下で絵を楽しめる機会はそうないと思います。

    私はこの作品の横にゴロンと寝そべってみました。仰向けになったり、横向けになったりして目だけでなく、感じる鑑賞を実践。立派な言葉なんてものは浮かばず、「いい気分!」と、ただごきげんさんになっていました。

     

     

    水野先生は20197月の焼火神社を皮切りに、10メートル作品を描き続けておられます。

    「どうしてこんな大作を描かれるようになったんですか?」と先生に尋ねると、

    「普段、画材の準備をするときは、キャンバスか紙か、またそれをパネルに貼るのか、木枠に張るのか、描いた後、どのように飾るかまでを考えるんですが、東京から遠く離れた島で描くにあたっては、これだという方法が決められずにいたんです。

     

    麻のキャンバス10メートルを現地にまずは送りました。で、直前になって、いっそのことキャンバスを切らず、現場でそのまま描くのが、あの焼火神社で感じた地の底から遥か宇宙の果てまで吹き上がる怒涛のエネルギーと共感したというか、共振したというか、一体化したというか、そういうものが現れるのに一番いいんじゃないかと思ったんです。それからなのです」

    と話してくださいました。

     

     

    その焼火以後も、作品が続々と生まれているわけですが、その背景を大きく分けると2パターンあるそうです。

    1. 神社や自然など、その場所に行った上で“場”のパワーを直接得てその場で描いたもの
    2. その場で全身で感じたものを、現場で描くのではなく、時間の経過とともに、さらに頭の中でイメージを膨らませた上で、東京のアトリエで描いたもの

     

    今回はその1にあたる、隠岐神社、由良此女神社、日御碕神社などで描かれた作品も見せていただきました。

    その場のエネルギーのようなものを大事にされているので、その時に落ちてきた枝や葉っぱなどもキャンバスから外すことなく、作品の一部として一緒に時を刻み続けています。

     

     

    そしてこれらの作品に触れた後、実は私は大いに悩み始めたのです。

    「これほど語りかけてくる絵があって、私はいったい何を綴ればいいのだろう?」

    「今回の本に、言葉は本当に必要なのだろうか?」と。

     

    Japan Craft Bookプロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    ーつづくー

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