Japan Craft Book メールマガジン

vol.45 2年ぶりの焼火神社例大祭へ。

Japan Craft Book Project のニュースレターを発信するように
なってしばらく経った頃、

ある方から、
「私は宗教に傾倒している人は苦手で、
今後のお付き合いは遠慮させていただきたい」
と、メッセージを頂いたことがありました。

(2024年7月23日 焼火神社例大祭 隠岐島前神楽「切り部」)

 

「はて? 私がしていることは、宗教なのだろうか?」

確かに、発信している文章には「神様」という言葉が度々出てきます。
世の中には、そうとらえる人もいるだろうと思いつつ、
どこか腑に落ちないものがありました。

 

(菱浦港へ向かう車の中から)

 

隠岐島に行くと、こんな空と海に出逢います。

信仰や宗教という概念など持ち出さずとも、
目の前に広がる圧倒的な美しさに心を動かされ、自然と手を合わせる。
日々の営みの中で、何かに守られていると感じる。
人間の力など及ばぬ大きな何かを当然のものとして受け入れ、
その存在とともにある暮らしこそが、人間の本来の姿なのではないか。
そんなふうに思ったりします。

(西ノ島 摩天崖)

 

ちなみに、Natureにあたる「自然」という言葉が誕生したのは
明治も終わりのことだそうです。
それまでは「おのずと」ある山川草木を総称する言葉はなかったのだとか。

「かみさま」という言葉を意図的に避けた「超越的存在」というような言い方も、
ここで風に吹かれていると、都会に暮らす人間が作った陳腐なもののように思えてきます。

そして、この国に暮らし、四季を愛で、
おのずとこころに湧き上がってくるものは、
これからの思索の道すじを照らすものとなる気がします。

(明治以前は「焼火山雲上寺」。平安時代初期ごろには焼火権現の名は都にまで届いていた)

 

さて、このニュースレターでもご案内しましたが、
去る7月23日の焼火神社例大祭へ『神迎え』に共振してくださった
方々とツアーを組んで出かけました。

総勢16名。賑やかでとにかく笑いの絶えない旅となりました。

(旧三田小学校に展示保存してある水野先生の焼火10メートル作品。
こちらにご案内するのも叶えたかったことの一つでした)

 

実は本を作る過程の中で、画家の水野竜生先生、デザイナーの谷さやさん、稲垣の3人で
「本が完成したら、購入してくださった方々と一緒に隠岐に行けたらいいね」
と度々話していたのです。

また、松浦道仁宮司に取材させていただいたとき、
「一番の恩返しはなんでしょうか?」と尋ねると、
「ここに、いろいろな人が来てくれることですね」と、にっこり笑っておっしゃったのです。
離島の標高300mにある社を守り続ける宮司の言葉は、ある重量感を持って私の心に響きました。

 

そんな経緯もあり、今回のツアーが実現したことはまさに感慨無量でした。
また、隠岐島前神楽保存会の演者の皆様と『神迎え』をご覧いただきながら、
じっくりお話しすることも叶いました。

「この絵は俺だな。いい動きしてるな」

などと喜んでくださる様子を拝見できたことは嬉しく、
深く安堵するものがありました。

連綿と続く神楽を継承しておられる方々、地元の方に愛されてこそ、
この本の存在は意義あるものとなります。

 

 

そして最後に、最も嬉しかったのは、
西ノ島にある素敵な図書館「いかあ屋」にて、
地元の小学生たちにも特装版を見てもらえたこと(書林版は寄贈済です)。


子どもたちの反応は実に素直です。 「こんな大きな本、初めてみた!」
「むずかしい文章でよくわかんない〜」 「なんだか、気持ちいい紙だね」
そして、最後に
「ここに、かみさまがいるね」と言ってくれた子がいました。

もうそれだけで、プロジェクトメンバーは十分すぎるほど
幸せになれたのでした。

 

ツアーにご参加くださったみなさま、ご尽力いただいた西ノ島観光協会、
JTB山陰支店のみなさま、本当にありがとうございました。

また、このご縁をより一層、大切にしていきたいと思っています。

 

Japan Craft Book プロジェクト
代表  稲垣麻由美
official@japancraftbook.com

ーつづくー

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