実は、私は電子書籍愛用派です。
読んでいてわからないところがあれば、すぐに辞書機能を使え、モヤモヤを残さず読み進められるのが実にありがたい。気になった言葉、地名、知らなかった人物から、クリック一つで次なる知の扉がいとも簡単にパタパタと開いていきます。
なのに、どこか満たされないものを感じるのはなぜか、ともよく考えます。きっと人間は、大切なものを抱きしめたい、愛しいものには触れたい、そんな生き物だからではないかと思います。
心に深く触れたものは、手でも触れたいのです。
Japan Craft Bookは、「思わず触れたくなる」そんな佇まいの本であって欲しいと思っています。
では、「どうする?」です。私は思い描くばかりで、実際に手を動かし、形にすることはできません。
そんなときに出逢ったのが、有限会社篠原紙工の代表取締役・篠原慶丞さんです。篠原紙工さんのホームページにはこんなことが書かれています。
篠原紙工さんの江東区にあるオフィスにて
篠原紙工の「はじめに」
わたしたちには、大切にしていることがあります。
ひとつは、本質をさぐること。
お客さまの大切な想い、考えが伝わるプロダクトをつくるため、質問を繰り返します。
「なんのためにつくるのか」「なぜこの仕様なのか」を問い続け、形ないものに宿る本質をともに見つけ出し、形にするためのプロセスを大切にしています。
次に、お客さまとチームとなってはたらくこと。
わたしたちは、プロジェクトをお客さまと一緒に育てたいと願っています。
デザインする人、形にする人といった区別なく、互いのアイデアや制作物に対する想いを共有し、お互いに最善を尽くして形にしていく。
みんなで目線を合わせてできあがったものは、手にする人の心を動かせると信じています。
最後に「やってみよう」。
篠原紙工には、誰も形にできなかったアイデアが日々持ち込まれます。
未知へのチャレンジは、失敗や予期せぬトラブルが避けられません。
しかし、トラブルも物を生み出すひとつの工程であり、わたしたちとお客さまとがともに乗り越えることで見えてくる世界があります。
制約の中で知恵を絞り「やってみよう」から出発するものづくりには、常に新しい発見があります。
肯定と否定を繰り返し、これまでも異端のプロダクトが生まれました。
人の手と心が動いた結果であるプロダクトを世に送り出すには、想像以上のエネルギーが必要です。
エネルギーの源はいつも人です。
だからわたしたちは、篠原紙工に関わるすべての人を大切にします。
そして、お客さまとともにチャレンジできる血の通った関係を築き、本質を脈打たせ、心を揺さぶるモノづくりをしていきます。
https://www.s-shiko.co.jp/about/
あまりにしびれるメッセージだったので、全文転記してしまいました。
おいおい。
こちらが篠原慶丞氏。実際に選んだ紙を使って糊付けをしていくと、どれくらいの厚み、強度になるか、すぐに見本を作ってくださいました
篠原紙工さんのお仕事内容をひとことで伝えるのは(私には)難しいのですが、デザイン、装幀、製本、印刷というわかりやすい範疇にとどまらず、紙を扱うプロダクトのプロと言えばよいでしょうか。
(ちなみに、ご縁を作ってくれたのは、ブックフォールディングの世界的第一人者であるOruFunの二人です。ありがとうございます!
そして今、篠原さんに全面的にご協力いただき本作りを進めています。
篠原さんのすごいところは、どんな要望に対しても「さて、どうしましょうか」の一言から始まって、そこにはいつも楽しい響きが感じられること。
デザインを担当してくださっている谷さやさんが迷っている箇所に対して、思わぬ角度から具体案がいくつも出てくる。その度に谷さんの顔がぱっと明るくなる様子を私は何度となく見ていて、また嬉しくなるわけです。
そして今、私は頭の中に漠然とあったものが、目の前で形になっていく様子を最高に興奮しながら眺めている、そんな感じです。
つくり手たちが存分に遊び心を発揮し、細部にさまざまな工夫を凝らす。
それがどうやったら実現するのか。どうしたら美しい佇まいとなるのか。和紙にどこまでこだわる必要があるのか。何より、伝えたいメッセージを体現するプロダクトとなっているのか。互いの思いや関係性もちょっと萎んだり膨らんだりしながら、漸く、判型やページ数が定まってきました。
あと一つお知らせです。
次回のニュースレターをお送りする頃には、Japan Craft Bookのホームページが完成している予定です。まとまった形でプロジェクトの概要をご覧いただけるようになります。本の販売まではまだ少し時間がかかりそうですが、プロジェクトの広め方など、さまざまなアドバイスを頂けますと大変ありがたいです。
毎週、お読みいただきありがとうございます!