コロナ、戦争、地震・・・激動の世界情勢の中で、「自分に何ができるのだろう」と日々考えます。
その都度、自分の非力さを思い知らされますが、いきつくところはいつも、自分にできることで世界に貢献するしかない、です。
この写真は、隠岐諸島の島前の知夫里島、西ノ島、中ノ島の3島をつなぐ内航船から撮ったものです。夕暮れどきの美しさはまた格別です
今の私には、Japan Craft Bookをつくることがその一つだと真剣に思っています。本の力を信じているからです。
「本」は単なる物質でありながら、手にした人に語りかけ、時空を軽々と越える扉を持ち、時に親友のような存在ともなります。実に面白いものだと思います。
心が荒んだ時、不安でいっぱいな時、恐怖で身体が動かなくなった時、あたたかい一杯のお茶に救われることがあるように、手のひらにのる一冊が誰かの心をあたため、そこに神様が宿ることを信じて、さあ、世界へ飛んでいけ!とばかりに、ただいま制作中です。
デザイナーの谷さやさんが、小さなサイズで見本をたくさん作ってくれました。
どの絵をメインにもってくるのか、全体のページ数はどれくらいがベストか、横長と縦長のどちらのレイアウトがきれいなのか、文字はどこに配置すると良いのか。形にしてもらうことでわかることがたくさんあります。
そして、ベースとなる紙の色は何がいいのか、和紙をどう使うのか・・・。一つ一つ検証していきます。
私が谷さんにお願いしたことは一つ。
「これまでの本づくりの常識にとらわれないで欲しい」でした。
あくまでも“Japan Craft Book”であり、言葉にこそしませんでしたが、私の中で大事にしたいのは、佇まいと手触りでした。
谷さんはそれを見事に汲み取って、進めてくれています。
そして、いろいろと検討した結果、焼火神社の縁起をもとにした『御神火』と、隠岐島前神楽をもとにした『神迎え』の2冊を、同時に制作することになりました。
どちらも和紙をふんだんに使った「特装版」と、手にとっていただきやすい価格帯のもの、その2パターンを作ることにしています。材料費、印刷費など、当たり前ですがシビアな現実にも向き合っています。
画家の水野竜生氏とデザイナーの谷さや氏
そしてなにより、地元の方、今回であれば隠岐に暮らす方々に愛される本を作りたいと思っています。とはいえ、「愛されるとは・・・」を考えると非常に難しく、まだまだ試行錯誤が続いています。
Japan Craft Bookプロジェクト
代表 稲垣麻由美
ーつづくー