カテゴリー: Japan Craft Book メールマガジン

Japan Craft Book メールマガジンのバックナンバーです。HPが公開するまでの間、プロジェクト代表稲垣の個人ページで公開いたします。

  • 【vol.19】コストの現実と価値

    【vol.19】コストの現実と価値

     

    「人は、どんなときに気持ちよくお金をだすものでしょうか。」
    そんなことを、今、グルグル考えています。

    昔、起業したての頃、「こんなに頑張っているのに、お金がついてこない!」と、ある社長の前でぼやいたら、「それは、まだまだ君が誰かを幸せにできていない、ってことだよ」と笑って話してくださいました。

    お金はエネルギーであり、例えば「ありがとう」や「感謝」の対価が収入なのだと腹落ちしてから、私は少し変わったような気がします。

     

     

     

    さて、どうしてそんなことをグルグル考えているかと申しますと、日々、本作りの現実と向き合っているからです。
    「日本の神様の物語を、日本の紙に綴る、描く。」というコンセプトのもとにスタートしたこのプロジェクトは、当然のことながら制作費が通常の本よりかなりかかります。

    「日本の紙」=「和紙」を使うと決めた時点で、それはわかっていたことであり、単に紙代だけでなく、紙を変えると印刷方法も変わり、製本の仕方も変わります。

     

    ですから、本作りをスタートする時点で、次のどちらで進めるかを決める必要がありました。

    【1】1冊いくらにするかを予め決めておき、コストを考えながら仕様を決める。
    【2】ここに集ったメンバーが、これぞと思うものをまずは形にする。そこから売値を考える。

     

    出版業界にいる人間にとっては【1】が当然で、この視点なしに進める危険性は骨身にしみてわかっています。

    先日も、お世話になっていた出版社が民事再生手続を行った、との連絡が裁判所から届きました。とてもいい本を丁寧につくっておられる版元さんでした。ここ数年で同様のケースが数社あり、厳しい現実を日々リアルに感じています。


    ですが、今回のプロジェクトを【1】で進めると、薫り立つ花が咲かない気がしました。これだけたくさんの本が日々生まれ、消費され、情報が溢れる中で、ちゃんとエネルギーが宿り、何かが薫るものでなければ、手に取ってもらえません。


    まして、宿したいものが日本の美や日本人の精神性のようなものであるならば、コストありきではうまくいかない、既存のマーケティング通りにはいかない、と思ったのです。

    自分達が納得いくものをまずは作ってみよう。そこからコストとのバランスを考えよう、とスタートしてはや1年。

     

     

     

    そして、形になりつつある『神迎え』の特装版。
    美しいものが誕生しつつあると自負しています。

     

    ただ、いくら自分達がそう自負していても、それが市場でどう受け入れらるかは別。どこに価値を感じていただけるのか。かかった費用に見合った価格にしても、「これが欲しい!」と思ってもらうために私は何をすればよいのか、そんなことを考え続けています。


    ちなみに、この本を作成するために必要な石州和紙はすでにまとめて購入済みです。冒頭に触れた通り、私が気持ちよく代金を納められたのは、こんなにも美しい紙を生み出してくださっていることに感謝しているからです。というより、むしろあの工程と手間を考えたらこの金額でいいのでしょうか、と思いました。まさに、価値とのバランス。

     

     

     

    また、和紙にもいろいろあるのですが、手漉き天日板干しのものをお願いしました。干し方によってもお値段が変わります。コストを考えて、天日干しとテンレス(鉄板)干しのどちらにするかちょっと迷った時、和紙の件でお世話になっている東京マスミの横尾靖さんから「天日干しとステン干しの違いは、ぱっと見ただけではわからないんです。でもね、これが2年、3年経つうちに明らかに違いが出てくるんです。そういうことがとても大事なんです」と言われました。


    石州和紙は実にしなやかで黄味がかった色合いをしているのですが、時を経るにつれさらに強く、白く美しくなっていくそうです。


    この本が広がることが、ささやかながらも日本の和紙を広めることにつながる、そう信じて制作しています。

     

    Japan Craft Book プロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    ーつづくー

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  • 【vol.18】画家と創るアートブック

    【vol.18】画家と創るアートブック

     

    先日、ある方から、「あなたのニュースレターを読んでいますが、なんだか新興宗教みたいですね」と言われました。

    確かに、『神様』という言葉を多用していますので、そう感じられる方もいらっしゃるだろうなと思いました。


    日本人が持っている、八百万の神に自然と手をあわせる心、『畏怖の念』のようなものを表現したい、それを本づくりの柱としたい、と思っているのですが、言葉で伝えるというのは本当に難しいですね。


    そういえば、湧きに湧いたWBCでも「野球の神様」という言葉がたびたび聞かれましたが、こういったときに「神様」が出てくるのは、やはり日本人ならではでしょうか。

     

       

    篠原紙工さんにて。紙の厚さや大きさを細かに検証。ほんの僅かな違いが本の存在感を変える

     

    さて、ようやく1冊目の本が色校正まで進みました。タイトルは何度かお伝えしている『神迎え』です。当初予定していた、焼火神社の縁起を題材とした『御神火』より先に、隠岐島前神楽の世界を描いた本をまずは完成させることになりました。

    ちなみに神楽とは神様に奉納する歌舞のことで、ルーツは、神様を迎える場「神座」において神々に神意を尋ねるために行った祭りです。現在はシャーマニック的な要素はほとんど見られなくなりましたが、それでも隠岐島前神楽には、その空気感のようなものが色濃く残っていると感じました。

     

    「聖なる山の頂きへ神々を迎え入れる今宵、 踊るや踊る 謳え響け 愉悦一つになる」

    という一文から始まる、神様と人がともに舞い戯れる特別なひとときへ皆様をご案内したいと思います。

    そして、その世界を本にするのに欠かせない、大きな要素となるのが「絵」です。冒頭のくだりではありませんが、どれだけ言葉を尽くしても伝わらないものがあります。清澄な空気が漂う中、次々と神々が舞い降りる様子を、画家・水野竜生氏が今回見事に描いてくださいました。

     

        

     

    実は、Japan Craft Bookを構想した段階から、絵は画家の方にお願いしたいと考えていました。

    弊社には日本近代文学館編の名著複刻版シリーズが100冊ほどあるのですが、明治、大正、昭和初期ぐらいまでは、本の装幀や挿絵は画家が担っていたのです。

    1冊1冊に作家と画家の魂がこもっており、実に美しく、創意に満ちています。これらの本には香りも温もりもあります。そういう本をつくりたいと思っていました。
    私が感動したタラブックス(インド)の『夜の木』も、まさにそうでした。

     

    そして『神迎え』は、大人の絵本というのともちょっと違う、アートブックともいうべきものに仕上がっていると思います。

     

    弊社オフィスで名著復刻シリーズを展示したときのものです。

    高校生の男の子が「めっちゃイケてる」と、興奮しながら手にしていた姿が実に印象的でした

     

    ここで水野先生の簡単なご経歴を紹介させてください。

    水野竜生 (みずの・りゅうせい) 
    1964年 新潟県柏崎市生まれ
    現在、東京と柏崎のアトリエにて制作


    【経歴】
    2004~2010 2004 年上海に、2007年北京にアトリエ開設、日本とフランス、中国を拠点に制作
    1991~1993 パリから定期的に上海に通い、3人の先生に水墨画技法を学ぶ
    1990~1997 パリを拠点に制作
    1990 グランド・シュミエール、エコール・デ・ボザールで 油彩を学ぶ 
    1989 東京藝術大学美術学部日本画科卒業

     

    【受賞】
    2004 上海春季芸術サロン青年優秀芸術家栄誉賞受賞
    1996 アーティスト・コンテンポラン・フランセ・ア・ストックホルム1996栄誉賞受賞 
    1992 テーラー財団Finez-Pland賞受賞(パリ)
    1992 ル・サロン栄誉賞受賞(パリ) ル・サロン会員に推挙


    あの焼火神社で描かれた色鮮やかな10メートル作品と、今回の水墨画の違いに、「同じ作家なのですか?」と尋ねられることが度々あるのですが、このご経歴からおわかりいただけるかと思います。

    楽しみにお待ちいただけますと幸いです。

    なお、インスタグラムで取材の様子などをご覧いただけます。

    https://www.instagram.com/japan_craft_book/

     

    後追いでアップしておりますので少々違和感があるかもしれませんが、写真から感じていただけるものがあると思います。ちなみに、写真はデザイナーの谷さやさんによるものです。

    さて、このメルマガは来週はお休みし、4月からは月に2度の発行予定でおります。

    皆さま、いつも本当にありがとうございます。

     

    Japan Craft Book プロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    ーつづくー

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  • 【vol.17】このプロジェクトが描く未来

    【vol.17】このプロジェクトが描く未来

     

    北朝鮮が日本海に向け弾道ミサイルを発射した、とのニュースを耳にする度、背筋が凍ります。人間はとてつもなく大きな力を手にしたとき、試してみたくなる生き物だと思うのです。ふと魔がさす怖さ。感情と欲望をコントロールすることの難しさは歴史が証明しています。

     

    そんな不安が膨らむばかりの状況下でも、ミモザの黄色い花が満面の笑みを見せています。

    芽吹き、花が咲き、散る、そしてまた芽吹く。そんな自然の摂理にこころ救われます。人知の限界や命のはかなさを体感し、我々はほんの数年前より、何かに向かって手を合わせることが増えたのではないでしょうか。

    ちなみに、日本語の「いのり」という言葉の語源は「生宣(いの)り」です。

     

    「い」は生命力を、「のり」は詔(みことのり)からきているそうで、宣言、宣命を意味します。「いのり」とは生命を尊ぶ宣言。そうであるならば、手を合わせずにはいられない日々です。

     

     

    脈絡のないスタートとなりました。

    さて、漸くJapan Craft Book Project のホームページができました。

    https://japancraftbook.com/

    ご覧いただけますと幸いです。

     

    と申しましても、なんとか形にはなったものの、文章も整理しきれておらず、情報も完全とはいえない状態です。

    ただ、ニュースレターを読んでくださっている皆様には、完璧なものに仕上げてからお見せするというより、このプロジェクトの芽吹きのところからお伝えして、伴走していただきたい、という気持ちで発信しております。それゆえ、ご容赦いただけますと幸いです。

     

     

    実はこのプロジェクトを立ち上げたときに、成し遂げたいこと、期待される波及効果のようなものを考える機会を得ました。ここで少し共有させてください。

     

    ■日本の職人技や伝統工芸品というと馴染みがない、遠い存在だと感じる方でも、「本」という身近な存在(アイテム)に集結させることで、馴染みやすくなる。結果として、小さいながらも日本の伝統文化に触れる機会を創出することができる。

    ■本を購入していただくことが、日本の伝統工芸を支援すること、社会貢献へとつながる仕組みにしたい。

    ■希少性のある美しい本は珍重されており、コレクションしたくなるような本は国内外でニーズがある。美しい本を作ることが、より価値あるものになる。

    ■フォーカスした神社や地域の活性化につながるものにしたい。

    ■普段は見られない本づくりの裏側を公開していくことで、絵に興味がある人、伝統工芸に興味がある人、出版そのものに興味がある人、多くの人に興味関心を持ってもらえる。結果として、ご協力いただいた関係者にHAPPYな循環が生まれるようにしたい。

    ■この本を世界へ発信することが、日本の精神性を伝える、感じ取ってもらえるものにしたい。

     

     

    あと、個人的に実現したいことがあります。

    日本の大多数の神社が厳しい経営状況にある中、注連縄にビニールや布を使っているところが増えています。私はそれがここ数年、気になって仕方ないのです。地方はまだ稲藁があるので良いのですが、都会の神社では特にビニール製が増えており、そこにカビが生えていたりします。

     

    このプロジェクトの収益が上がれば、ご縁があるところから、少しずつ麻や葛の繊維、稲藁に替えていきたいと夢見ています。なぜ、自分がそんなことを思うのか不思議なのですが。
    捕らぬ狸の皮算用もいいところですが、収益の一部を注連縄自然素材回帰運動(勝手に命名)に充てたい、とここにこっそり宣言します。

     

    口ばっかりにならぬよう気をつけなくては、とプレッシャーも感じます。

    でも、言葉にする、さらに文字にすると、思いは叶うと申します。

    なんと言っても、日本は「言霊さきわう国」ですから。ちょっと使い方が違いますでしょうか(笑)

     

    Japan Craft Book プロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    ーつづくー

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