ずっとずっと心の底に沈めていたことがあった。
怒りという感情は、思い出さないようにしていれば
なんとかやり過ごすことができる。
ただ、沈めているだけなので
ふとしたときに、小さな泡がぷすっぷすっと
かすかな音を立てて湧き上がってくる。
くさった水に小さな泡が現れるように
にごった池に泡がうかぶように。
そんなタイミングで、ある人に会った。
なんとなく、話してみた。
「こんなことがあってね・・・」と。
するとその人が、
拳を握って、机をたたきながら
「それは、ひどいよ、ひどい」
と怒ってくれた。
顔を真っ赤にしながら。
そう、ものすごく
怒ってくれたのだ。
私はずっと、
そうやって怒りたかったんだな
と気づいた。
そして、その姿をみているうちに
失礼なことに
ケラケラ笑い出してしまった。
ありがとう。
わかってくれて。
そう言いたかったのだけれど
笑ってしまった。
そして、その人と別れる頃には
怒りが完全に消えていた。