Japan Craft Book メールマガジン

【vol.5】超自然的な存在を感じる場所

それにしても人のご縁とは不思議です。
私が知人もいない隠岐島ですんなりと焼火神社へと行くことができたのは、私に水野先生と谷さやさんを紹介してくれた友人(森田多佳子さん)が、次に隠岐島在住のデザイナー、南貴博さん・麻衣さんご夫妻を紹介してくれたからです。

一人のキーマンの存在のおかげで、驚くほどコトがするすると動く、という時はたいてい何事も吉。その友人が「面白い人が行くから、宜しくね」と南さんにささやいてくれていなかったら、私は西ノ島の港でひとりポツンと困り果てていたことでしょう。

その南さんご夫妻は7年前に東京から隠岐島・海士町に移住。実は東京時代から水野先生と谷さんと親しかったことを、私は隠岐に行ってから知りました。そして南さんが、水野先生に「一度、隠岐へ遊びに来ませんか」と誘うことがなければ、このJapan Craft Book プロジェクトはきっと違う形になっていたはずです。

水野先生は初めて焼火神社を訪れたとき、こんな風に感じられたそうです。

「そこは、宇宙の中心にいるような気持ちになる所。(中略)なんとも言えない気持ちの良さ。体の中心と宇宙の創造力の中心がつながったような気持ちになる。頭の中の凝り固まっているものが解けるように感じ、清々しい気持ちになった。車に戻り早速絵を描く。何かが変わった。」(「焼火神社」水野竜生ブックレットより)

その「何かが変わった」瞬間の絵が下記のポスターのものだそうです。そして、その約3ヶ月後に再来島し、社務所にこもって描き上げられたのが、私を隠岐に導いてくれたの10mの絵だったのです。

 

 

2019年7月に焼火神社で開催された水野竜生展時の写真。右から南貴博さん、水野竜生先生、谷さやさん。
この2年半後に私はこの3人の方と出会います。写真提供:谷さん

さて、2022年3月、私は漸く焼火神社に到着します。その地に立った時、ふと思い出したのは、『神と仏』(山折哲雄著)の一節です。

「古く人類は、天空の広さや闇の深さにとりかこまれて生活していた。やがて彼らは、そのような無限にひろがる空間の中にカミやホトケの声をききわけるようになり、それらの超自然的な存在との対話をはじめるようになった。」

焼火神社は、標高451.7mの隠岐島前の最高峰、島前カルデラの中央火砕丘と呼ばれる火山地形・焼火山の8合目近くにあります。そこは今時の言葉でいうと、いわゆる絶景スポット。

穏やかな海が遠くまで広がり、島前3島の間を航行する船がよく見え、刻々と変わる海と空が溶け合う色をいつまでも眺めていたい…そんな場所です。そして、ここに立った古代の人たちが、見えない大きな存在と対話をし始めた姿をありありと想像できたのです。

 

私自身も、その場で自然と目に見えないものに手を合わせていました。そして、足もとから立ち上がってくる強いエネルギーに、意識が覚醒するような不思議な感覚をも持ったのです。

そもそも神社というものは特別なエネルギーが湧き出る場所に建てられ、後世になって「ここの御祭神は・・・」とわかりやすいものを後付けで配置してきたのではないでしょうか。神話を尊重しつつも、今、古の人たちのように、超自然的なものを感受する力を研ぎ澄ましていくことが大事な気がしてならないのです。

そして、我々が作ろうとしている本もそんなエネルギーを宿したものにしたいと考えているのですが・・・。

なかなか話がお社まで辿り着けません。次回こそは巌から生えたように建つ社殿。そして、超ダンディな焼火神社の松浦宮司のお話を!

 

南さんご夫妻が海士町で運営されている
絶景「コワーキングスペース」
https://www.kitaya-ama.com/

 

Japan Craft Bookプロジェクト

代表  稲垣麻由美

 

ーつづくー

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