先日、関係者が一堂に集まり、出来上がりつつある『神迎え』(部数限定・特装版)を検証する機会を持ちました。
この題字は書家・辰巳紫瑛氏によるもの。この美しい書によって、全体に奥行きのようなものが生まれたように感じています
おかげさまで、この本は読み物というより、水野竜生氏の画を存分に愉しんでいただける、まさにアートブックというべきものに仕上がってきていると思います。
ただ、実際に見本をみていくと、検討すべきことも多々ありました。
ページ構成の見直し、絵の大きさのバランス、和紙に印刷した絵の色調整、糊付けの位置、この本の格に相応しい函の在り方等々。
みなさまに早くお届けしたいのですが、試行錯誤はもうしばらく続きそうです。
和紙・表装のスペシャリスト・東京マスミの横尾靖氏 手漉き和紙と機械和紙のちがい。そもそも和紙とはなにか、について教えていただきました
改めてお伝えすると、この『神迎え』は、「日本の神様の物語を、日本の紙に綴る、描く」というコンセプトのもとに制作。
2022年7月23日、4年ぶりに開催された焼火神社(島根県隠岐諸島・西ノ島)の例大祭に参加し、そこで奉納された「隠岐島前神楽」の幽玄な世界を、“墨絵”と“神楽歌”をもとにした文で表現しようと試みたものです。
絵は西田和紙工房(島根県浜田市)の7代目・西田誠吉氏による手漉き天日干・石州和紙に印刷。文字は黒の紙の上にシルクスクリーン印刷。それらを融合して1冊にまとめ上げようとしています。
プロダクトディレクション担当の篠原紙工代表の篠原慶丞氏とデザイナーの谷さや氏
さて、この本とプロジェクト全体のアートディレクションを担当してくださっているのがデザイナーの谷さやさんです。
HPのデザイン・写真も同様です。
https://japancraftbook.com/
私の思いつきをよくぞここまで形にしてくださったと、本当に感謝しています。
「本はこうあるべき」という既成概念に捉われず取り組んでいただいたことが、今更ながら大きかったと思います。でなければ、触感という仕掛けまで考えたものにはならなかっただろうと想像します。
これまで写真のようなサンプルを大小様々にいくつも作ってくださり、それを一つひとつみんなで検証しながら進めてきました。
「いつもこんなにありがとう」と伝えると、「いえ、楽しいですよ。好きなことですから」と笑顔で返してくださることに、私は度々救われてきました。
誰かと一緒に仕事をするとき、こういったことの積み重ねがとても大切な気がします。
また、出来上がった本は書店での販売は考えておらず、自社サイトで販売する予定です。発行部数も少ないので、取次さんにお願いするまでもないという現実もありますが、つくったものをお客様に直接お送りする形がベストだと考えています。
これまでの過程を通して、私がやろうとしているのは、出版事業というより、「本という形をしたアートの小売業」なんだと思うようになりました。
一人静かに見本と向き合う画家・水野竜生氏
『神迎え』は限定30部で夏に刊行予定です。
実は先日、前回のニューレターを読んでくださった方から、「本だと思うから値段設定が難しいのではありませんか。アートだと思うと値つけが変わるはずです」とのメッセージをいただきました。
このメッセージが私の中でのもやもやを一気に晴らしてくれました。
ありがとうございます。
また、焼火神社の縁起を描いた『御神火』も同時進行で進めています。
こちらは比較的手にとっていただきやすいものになるよう、算盤を弾きながら慎重にすすめています(笑)
引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。