Japan Craft Book メールマガジン

【vol.13】感得する。紙に宿す。

 

Japan Craft Book のコンセプトは

「日本の神様の物語を、日本の紙に綴る、描く」です。

あらためて「コンセプト」を辞書で調べてみると、「貫く基本的構想」とありました。まさにその通りで、基本的構想という言葉が実にしっくりときます。その構想を貫きながら、只今、本作りを進めています。

そして、「神様の物語」というと、どうしても古事記や日本書紀の世界を描くと思われがちなのですが、Japan Craft Bookではその地に宿るもっと根源的なエネルギーのようなもの、また、その地で古くから語り継がれている縁起や伝承を大切にしたいと思っています。

 

大袈裟な言い方かもしれないのですが、人がその場に立って感得する「何か」を、紙に宿すことができたら、それはとても素敵なことだとイメージしています。ですから、その紙にもこだわる必要があり、力のある「和紙」にいきつくのです。

ちなみにこの写真は、画家の水野竜生先生が焼火神社で描かれた10メートル作品の絵です。

 

 

現在、この絵は隠岐諸島西之島にある旧美田小学校の一室に保管されています。大正14年に建造されたこの木造校舎は今、地域のコミュニティーセンターとして活用されていますが、とても気持ちのよいところです。映画のロケ地にもなりそうな場所です。

 

コロナのこともあり、この絵は一般公開していないのですが、私はこれまでに2度、ありがたいことに静かに向き合う時間をいただくことができました。普段は誰も入ってこない閉ざされた教室という空間の中で、この10メートル作品は、大きな息遣いをしながら確かに「いる」と感じました。

「ある」ではなく、「いる」という感覚です。

そんな風に感じ取ったものを、本という形を通して届けられたらと考えています。

 

【本作りの進捗状況2】※1はこちらより

前回のメルマガで「今回の本に、言葉は本当に必要なのだろうか?」と書きました。

圧倒的な力を放つ絵を前に、私は綴る言葉を見つけられずに、ずっといたのです。

 

 

ただ、焼火神社には古くから語り継がれている「焼火権現縁起」があります。それを何度も読み返しているうちに、ただその縁起を忠実に綴る、伝える、それこそが価値のあることではないかと次第に思うようになりました。冒頭にも書いた通りです。

焼火の縁起は「一条天皇の頃に・・・」と始まるお話ですから、平安時代に遡ります。自分の言葉で何かを新たに紡ごうとする必要はなく、こねくり回す必要もなく、現代の言葉にしてわかりやすく伝えるだけでよいのだ、そう心から思えたときから、流れが大きく変わったように思います。

 

要は、かっこいい言葉を綴りたい、どこか褒められたいという我欲に囚われていたのだと、恥ずかしながら気付きました。

現在はその縁起を綴った原稿をベースに、デザイナーの谷さやさん、製本をお願いする篠原紙工さんを中心に、どういう形にしていくのがよいかを試行錯誤しながら、進めています。

 

 

Japan Craft Bookプロジェクト 

代表  稲垣麻由美

ーつづくー

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