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  • 【Vol.31】『神迎え』ー翻訳家 武部由子ー

    【Vol.31】『神迎え』ー翻訳家 武部由子ー

     

    いつの頃からか、季節はゆっくり変わるものではなく、 ある日突然、コトンと音を立て変わる様になりました。

    特に今年は、真夏と秋の境に、厚いシャッターを すごい勢いで下ろされたかのように感じています。

    青い空

     

    少しずつ、なにごとにおいても、情緒というものが薄らいでいるような気が致します。

    ゆっくり愛でる。ゆっくり歩く。ゆっくり、じっくり味わう。 そんなことがとても貴重に思えます。

     

     

    それを言い訳に・・・、いえいえ、そんなつもりは全くないのですが、 Japan Craft Book Project も、ゆっくり、じっくり進んでいます。

    たとえば、和紙の厚さが数ミリ変わることで、用いる箇所、印刷手法を再検討する必要があったり、添える英訳について、翻訳家さんと何度もやりとりしたり・・・です。

    そう、その『神迎え』を翻訳してくださった武部由子(たけべゆうこ)さんを、今回はご紹介します。

    『神迎え』を翻訳してくださった武部由子(たけべゆうこ)さんを、

    【武部由子 映像監督・翻訳家】 米国コロンビア大学大学院映画学科修了。NYにてコンテンポラリー・ダンサー、作曲家、画家等とコラボし、映像作品を制作。2016年、帰国後、国内外を問わず、ショートダンスフィルムやドキュメンタリーなどの映像制作および、映画パンフレット等の翻訳に従事。

     

    武部さんとは、友人を介してコロナ真っ只中に出逢いました。 ある方の書籍を稲垣が編集、その書籍の映像化を武部さんが担当されることになっていたのですが、諸事情により方針変更。その企画についてご一緒することは叶わなかったのですが、あたたかく謙虚なお人柄が強く印象に残りました。どの世界でもそうですが、本物の方ほど謙虚です。

    また、ご自分の頭の中だけにある映像を武部さんが語りだすと、まるで目の前にスクリーンを用意されたかのように、そこにいた誰もが、鮮明に映像を共有できた、という体験をしました。それは、言葉の魔法によって誘われた世界でした。 今思えば、翻訳家でもいらっしゃるので、ある意味、当然の語彙力、表現力なのかもしれませんが、同じ言葉を使う立場の者として、その才能に圧倒されたのでした。

    水野竜生氏の原画

     

    そして今回、『神迎え』を英訳すると決まったとき、真っ先に、お願いしたいと浮かんだのが武部さんでした。

    なにせ、『神迎え』はこんな文章から始まります。

    ― 聖なる山の頂きへ神々を迎え入れる今宵、 踊るや踊る 謳え響け 愉悦一つになる ー

    日本人ならなんとなくイメージできるこの情景を、英訳するのは相当難しいことなのだろうと思っていました。

    ですから、武部さんが「挑戦してみたい」と おっしゃってくださったときは、小躍りして喜んだものです。

    そして、実際にやりとりをして、一番難しかったのが、タイトルの『神迎え』でした。

     

    神様を「お迎えする」とは、いったいどういうことなのか。

    Welcome なのか Inviting なのか。

    キリスト教を信仰する人々がイメージする「神」と、神道、神仏習合が息づいた国の人々がイメージする「神」との違い。 そこを何度も議論しました。

    そして、結局辿り着いたタイトルが、

    Inviting Gods ― TAKUHI Shrine, OKI Islands ― です。

     

    水野竜生氏の原画

     

    英訳が完成したことで、 今、この本を通して伝えたかったことが 鮮明になった気がしています。

    The evening when the Gods are invited to the top of the holy mountain, we dance and dance. Celebrating, reverberating, all pleasures will unite.

    When the darkness spreads into the cedar forests, Drum sounds echoing in a drowsy shrine, And a Kami-Uta deliberately pervades the air.

    Come and gather round, Gods here and there. Appearing from the ancient time, Enlighten human beings about the power of Gods.

    ……

    さぁ、世界へ飛んでいけ。 Japan Craft Book !

    今号もありがとうございました。

    Japan Craft Book プロジェクト
    代表 稲垣麻由美
    official@japancraftbook.com

    ーつづくー

  • 【Vol.30】神が楽しむ神楽か、人が楽しむ神楽か

    【Vol.30】神が楽しむ神楽か、人が楽しむ神楽か

    神楽の本を制作しているからには、さまざまな地域の神楽を見てみたいと常々思っています。この狭い日本列島で、神楽とよばれるものはなんと数千もあるそうです。

    「なぜ、Japan Craft Bookの第一号が『隠岐島前神楽』を題材としたものだったのか」と尋ねられても、今となっては、「それは、ご縁に導かれるままに」としか答えようがないのですが、多くの神楽に触れる中で、制作中の『神迎え』を通して伝えるべきメッセージのようなものが、より明確になっていく気がしています。

    そんな中、ある出版社での打ち合わせの帰りに立ち寄った東京大神宮で、こんなポスターを見つけました。

    伊弉諾神宮 2023年 神楽祭のポスター

     

    淡路島にある伊弉諾神宮で三大神話といわれる高千穂、出雲、淡路の神楽が一度にみられるというのです。これは行かないわけには参りません。迷うことなく足を運びました。

    淡路といえば、国生み神話。伊弉諾神宮は、言わずと知れた古事記・日本書紀の神代記の冒頭に国土創生の夫婦神として現れるイザナギノミコト・イザナミノミコトの二神をお祀りする最古の神社です。淡路国一宮で、地元では「いっくさん」と呼ばれています。神戸出身の私には、どこか近くに感じられる存在です。

    伊弉諾神宮 神楽祭の一幕

     

    境内に設けられた特設ステージにずらりと並べられた席数は1000席近く。阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた伊弉諾神宮ですが、その復興事業の一つとして、くにうみ神話まちづくり実行委員会が主催となって、所縁の深い高千穂神社の「高千穂神楽」、出雲大社の「出雲神楽」を招請し、毎年9月23日に共演奉納行事を行うようになったのだそうです。今年が16回目でした。

    女神櫛名田比売(くしなだひめ)を助ける素戔嗚尊
     女神櫛名田比売(くしなだひめ)を助ける素戔嗚尊

    出雲神楽の「八岐大蛇」の一幕。長さ17mにもなるジャバラ状の蛇胴は竹と石州和紙で作られている。

     

    そして、今回、私が一番見たかったのは、出雲神楽の「八岐大蛇」です。この長さ17mにもなるジャバラ状の蛇胴は竹と石州和紙で作られています。お世話になっている西田和紙工房の西田誠吉さんからそのお話を伺っていたので、目の前でどんな風に動くのかぜひ見てみたかったのです。

    出雲神楽の「八岐大蛇」の一幕。長さ17mにもなるジャバラ状の蛇胴は竹と石州和紙で作られている。

     

    それにしても、大蛇の想像以上に激しい動きに驚きました。こんな風に扱える(舞える)ようになるにはどれだけの鍛錬が必要なんだろう、と思うと同時に、こんなに丈夫な紙って、凄すぎる!!と改めて思ったわけです。ときには大蛇の口から火花まで吹くのですからびっくりです。

    今更ながら、この和紙を使って自分たちはいま「本」を作っているのだと思うと、なんと贅沢で、ある意味、無知ゆえに進めることができた企画だったのだと改めて思ったのでした。

    淡路 西海神楽
    (淡路 西海神楽 パソナグループの若手が大活躍。現代も新しい神楽の創作がなされていることを知り、驚きました。)

    高千穂神楽 鈿女(うずめ)の舞
     高千穂神楽 鈿女(うずめ)の舞

    伊弉諾神宮にある書、「磤馭盧島」(おのころじま)
    (伊弉諾神宮に行かれたら、この書をぜひ探してください。「磤馭盧島」(おのころじま) ) 

    16時から始まった神楽祭は21時に終了。 全てを見終えて思ったのは、神代神楽と呼ばれる「岩戸開き」「国譲り」「大蛇退治」といった演劇的な要素の強い神楽は、観客のためにあったのだということ。

    そして、この神代神楽が生まれる前の要素が色濃く残っているのが隠岐島前神楽であり、それは神様を喜ばすための舞であり、神託を受けるものとして地域に欠かせないものであったこと。

    その違いを、実感として得られたことは私にとってとても大きなものでした。 もし、水野竜生先生と一緒に行った先が神代神楽を主に舞う神社だったとしたら、きっと違う絵が生まれていただろうと思います。そして、私の中で『神迎え』というタイトルも生まれなかったのだろうとも思うのです。

    *神代神楽 文化文政の頃、備中出身の国学者・西村国橋(こっきょう)が、『古事記』『日本書紀』をもとに創作。この頃までは、各地の神楽は修験道や山伏の色が濃く、五行思想や仏教思想が前面に出ていた。この時期、平田篤胤を中心として国学が隆盛。仏教思想を排して神道を日本の中心思想に据える動きが盛んとなった。

    Japan Craft Bookプロジェクト
    代表 稲垣麻由美

    ーつづくー

  • 【vol.29】特別編ー読者代表、西窪彩恵の潜入レポート

    【vol.29】特別編ー読者代表、西窪彩恵の潜入レポート

    ※本日のニュースレターは、JCBプロジェクト代表・稲垣へのインタビューを掲載した特別編です。

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    皆様こんにちは。初めまして。
    メルマガ読者であり、稲垣さんにタラブックスの『夜の木』をご紹介した西窪と申します。

    「メルマガを読んで、Japan Craft Bookについてお尋ねしたいことが色々あります!」
    と稲垣さんにお伝えしたところ、このような機会を拝命しました。

    というわけで、今回は私がJapan Craft Bookの制作現場へ潜入し、読者の皆様を代表して、気になっている点を質問させていただきました。

    開封率が脅威の70%超!という、注目度の高いニュースレターにおじゃまするにあたり、大変緊張していますが、最新のお話を聞いて参りましたので、ぜひ最後までご覧ください。

    西窪:
    構想3年、制作期間2年の時を経て、Japan Craft Book第一弾、『神迎え』がまもなく完成と伺っています。
    特装版と書林版があるとのことですが、違いを詳しく知りたいです。


    稲垣:
    特装版は、限定30~50部程度作成する予定です。
    画家、水野竜生氏の絵を石州手漉き天日干し和紙に印刷しています。
    さらに、水野先生が描かれた原画が1冊につき1枚入ります。

     

     

     

    そして、より多くの方に手に取っていただけるスタイルや価格を目指したバージョンの本を、「書林版」と名付けました。
    この書林版では、全てに和紙を使うことはできないのですが、表紙周りで使うことになっていて、裏面には英訳も掲載されます。

     

     

     

    前回のメルマガにも書きましたが、石州手漉き天日干し和紙を使っての本作りは、想定外の難しさでした。


    当初は書林版を作らないつもりだったのですが、やはりこの素材で多くの方に手に取っていただけるものも作ろう、という結論に至ったのも、2ヶ月ほど前のことです。
    やりながら考える、の連続です。

     

    西窪:
    制作期間が長期に及んでいるのは、素材の難しさや、作ってみて新たに感じることがあるからなのですね。
    実際に全貌を見られる日が楽しみです。


    私たち読者が実物を手に取れる機会はあるのでしょうか?

     

    稲垣:
    はい、ぜひ皆様に見ていただきたいです。
    特装版と書林版、二種類の『神迎え』が完成したら、お披露目会を東京・鎌倉・島根で開催したいと思っています。

     

    西窪:
    お披露目会、楽しみですね!
    名だたる制作陣の方々や、ニュースレター読者の皆様ともお会いできる機会になりそうです。

    Japan Craft Bookは、いわゆる美術品や、本の制作ではなく、新しいジャンルを作り、日本の精神性や伝統工芸を世界へ届ける、とても大きな挑戦ですよね。


    私たち読者としては、どのような関わり方や、応援の仕方があるのでしょうか?

     


    稲垣:
    まずはJapan Craft Bookを多くの方に実際に手に取っていただくのが、一番ありがたいことです。
    また、国内外問わず、原画展やトークショーを開催したく、そのような場を提供していただけると大変嬉しいです。

    2冊目、3冊目とこれからも続くためにはスポンサー企業、もしくは協業企業が必要だと考えています。
    この挑戦を面白がり、世界へと一緒にひろめていってくださる法人・個人を探しています。
    自薦他薦は問いませんので、コンタクトしていただけたら幸いです。

    そして応援に関して、実は同様のご質問をいただくことがよくあるのですが、私自身が見えていない側面もあると思います。
    皆様のほうから「こんな関わり方できるよ」「こんな支援の仕方もあるよ」と、教えていただけるとありがたいです。

     


    西窪:
    なるほど。ありがとうございます。

    最後に、稲垣さんや制作チームの皆さんが、仕上げの段階で魂を注いでいるこだわりなどがあれば伺えますか?

     


    稲垣:
    自ら定めたJapan Craft Bookのコンセプト (https://japancraftbook.com/) からブレないことです。
    正解が無い中で日々作り、考え、また作りの連続です。

    何をするか、何をしないか、どう進むべきかみんなで相談しながら、特にデザイナーの谷さやさん・篠原紙工の篠原慶哉さんに、知恵を絞り手を動かしていただきながら進んできましたが、今は自分達がベストだと思うJapan Craft Bookを完成させることに集中しています。

     

    そして、いつも応援いただきありがとうございます。多くの方が読んでくださっていることがとても励みになっています。完成を楽しみにお待ちいただけますと幸いです。引き続き宜しくお願い致します!

     


    西窪:
    稲垣さん、ありがとうございました!


    Japan Craft Book第一弾『神迎え』特装版、書林版は年内の完成・販売を目指し、準備をしています。

    その後は1年に1冊の制作ペースで、じわじわと世界へ広がっていくことをイメージしているそうです。

    私も読者の一員として、引き続き皆様と共にこのプロジェクトを楽しみたいと思います。


    最後までお読みいただきありがとうございました。

    何か感じていただけましたら、ぜひSNS等でのシェアをよろしくお願いいたします!

     

    ===============

     

    いかがでしたか?

    今回は特別編として、西窪彩恵さんに読者の方の目線からリポートしていただきました。

     

     

    篠原紙工さんにて

     

    よろしければ皆様もご意見やご感想、ご不明なことなどをお知らせ下さい。

    今号もありがとうございました。

    Japan Craft Book プロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

    official@japancraftbook.com

    ーつづくー

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    https://japancraftbook.com/