投稿者: mayumi

  • 【vol.34】書林版 ー掌に美しい日本を奏でるー

    【vol.34】書林版 ー掌に美しい日本を奏でるー

    おかげさまで『神迎え』書林版が形になってきました。 前回のニュースレターでもお伝えしましたが、「書林」とは書物がたくさんあるところ。 すなわち、書店・書房を意味します。

    掌にのる大きさで、表紙は手漉き和紙、本文のところは鳥の子紙にすることでコストを抑えました

    おそらく、ほとんどのものづくりは 「広く多くの方に、手にとってもらえるものを作る」からスタートします。

    そこから特別版なるものを作る流れだと思いますが、Japan Craft Book プロジェクトは、単に美装本を作るというのではなく、日本の伝統工芸との掛け合わせを大事にした本作りなので、進め方自体も試行錯誤です。

    この書林版がプロジェクトのコンセプト通り、「掌に 美しい日本を奏でる」になっているかは、我々ではなく、皆様にご判断をゆだねるところですが、日本人の霊性のようなものを感じていただけるのではないかと思っています。

    また、書林版は両面楽しんでいただけるようになっており、片面が日本語、反対面は英語版となっています。また、水野竜生先生の絵も全く趣の違うものになっています。

    『Inviting Gods ーKami-mukae』 も、ぜひ愉しみにしていただけますと幸いです。

    なお、この書林版のデザイン・装幀を担当してくださったのも、度々ご紹介している、谷さやさんです。

    アーティスト・水野竜生の絵、稲垣の書いた物語、書家・辰巳紫瑛の書、をどこでどう活かすのか。非常に難しい作業だったと思います。しかも、和紙を使うことが大前提で、コストも考慮しつつ、という大きな制約の中、この形に辿り着くまで、何度も試作を繰り返してくださいました。

    プロダクトディレクション担当の篠原慶丞さん と デザイナーの谷さやさん

    そして今は、プロダクトディレクション担当の篠原慶丞さんが、実際に形にすべく、和紙の微妙な厚さの違いによって趣がどう変わるのか、印刷手法は何がベストかを見極めるべく、さらに試行錯誤しながら進めてくださっています。

    丁度、今日届いた、色校正がこちら。あと少し、調整が必要そうです・・・。

    年内に完成。年明けにはご案内できるよう、頑張ります。

    「神の道は色々あるけれど、 真ん中の道は神に通じている。」

    これは 神楽歌の一節。 妥協せず、真ん中の道を探し続け、歩を進めます。

    今号もありがとうございました。

    Japan Craft Book プロジェクト 代表
    稲垣麻由美
    official@japancraftbook.com

    ーつづくー

  • 【vol.33】試作版を抱えてフランスへ。

    【vol.33】試作版を抱えてフランスへ。

    先日、弾丸3泊5日でフランスに行って参りました。 目的はフランスで画廊を経営してる方や、アート関係者にお目にかかり、お話を伺うことです。

    (パリ日仏文化会館 エッフェル塔のすぐ近くにあり、規模の大きさに驚きました。様々な日本の匠の展示が定期的に行われています)

    というのも、「和紙を使ったアートブックを作っている」と色々な方に話をしていると、

    「それ、フランスに持っていくといいよ。日本人はアートにお金を出さないから」

    「海外で販売すべきだよ」 など、ありがたいアドバイスをたくさんいただきます。

    それが1人や2人ではなく、10人を軽く越えたあたりから、 これは自分のセンサーで確かめたい、と思うようになったのです。

    コロナ後のフランスはどうなのか。きな臭いものが漂い始めた今、イメージだけではなく、肌で何かを感じ取ること。

    そして、それを制作途中で感じ取っておくか、 完成させてからどうするかを考えるかでは、大きな違いがあるように思いました。

    とはいえ、たった数日フランスにいただけでは、当然何もわかるはずありません。 ただ、感じたのは、フランスと日本の色彩に対する感覚の近さ。

    「グレー」の絶妙なトーンで品良くまとめられているデザインを方々で見かけ、それはまさに日本人が「鼠色」を浅葱鼠 鳩羽鼠 利休鼠 薄墨色 石板色 などと言って、見分け、使い分け、そして、バランスよく融合させているのと同じでした。

    繊細な感性に共通点を見出すのと同時に、石造りの街で、壁面にも天井にも装飾を施す足し算の文化と、木造建築、余白の美を追求する引き算の日本の文化の対比は実に興味深く、互いに惹かれ合う文化を持っていることを実感として得ることができました。

    ただ、そう単純なことではなく、現地に長く暮らしている日本人のアート関係者、レストラン関係者に、実際に試作品をご覧いただき、いろいろなお話を伺えて、とても参考になりました。

    書道も華道も茶道もそれなりに人気はあるけれど、フランスだって、多くの一般人は物価高に苦しみ、家賃がどんどん高くなり、余裕のない生活を送っているのは同じ。 そして、日本といえば、いまや完全にアニメの国と思われている中で、単に日本の伝統工芸というだけでは売れないという現実を、しかと受け止めてきました。

    私の結論としては、世界の方に手にとっていただけるよう、英訳をつけて制作するけれど、まずは、日本人に手にとってもらいたい。それなしには世界に目を向けられない、と逆に強く思って帰ってきました。

    Japan Craft Bookの活動が、 日本の伝統工芸にわずかながらも寄与するものになる、を最初に掲げ、ホームページにわざわざ

    <このプロジェクトの提供価値と期待される波及効果>

    https://japancraftbook.com/about/

    と書いた原点に立ち返る機会ともなりました。

    (形になってきました。こちらが書林版の見本です。)

    そして、より皆さまに手にとっていただきやすいバージョンとして作成したものが、こちらの「書林版」です。 掌にのるサイズで、表紙は手漉き和紙、本文は鳥の子和紙にすることでコストを抑えました。

    書林とは、書物がたくさんあるところ。すなわち、書店・書房を意味します。 「特装版」に対して、「普通版」とご案内するのも、あまりに味気なく、「書林版」としました。

    多くの方に届くように、という願いも、この「書林」の2字に込めています。

    最後に、こちらはシャルル・ド・ゴール空港、出国ロビー内の様子。長く面倒な出国手続きを終えて、ぱっと視界が開けた一等地にあるのが、この回転寿司カウンターでした。

    くるくる回るお寿司にシャンパンかと思いきや、多くの方がアサヒスーパードライと、日本酒の松竹梅を愉しんでおられ、大人気スポットでした。

    様々な国籍の方が楽しそうに舌鼓をうっておられる様子を眺めながら、厳しい現実もきちんと受け止めつつ、一方、なんだかとても明るい気分になって帰国したのでした。

    さて、これが本作りにどう影響するのか……。

    今号もありがとうございました。

    Japan Craft Book プロジェクト 代表
    稲垣麻由美
    official@japancraftbook.com

    ーつづくー

  • 【vol.32】明治元年創業 箱義桐箱店

    【vol.32】明治元年創業 箱義桐箱店

    我々が作っているものは、「本」というよりも「アート」もしくは、「アートブック」と言った方が正しく、私の伝え方を変えていかなければ、と思っているこの頃です。

    『神迎え』特装版は限定50部の発行と決まりました。

    そして、以前にもお伝えした通り、この特装版には水野竜生先生の原画が各1点、最後のページに納まります。

     

    水野先生が石州手漉き和紙1枚1枚に朱の岩絵具を塗り、その上にお神楽の舞人を描いてくださったもので、同じ絵は一つとしてありません。50点、ずらりと並べるとまさに圧巻です。

    ここに描かれたものは、人なのか、神なのか。

    どちらの存在も共にあるひとときが、まさに神楽。皆様にお届けできるのが、とても楽しみです。

    そして、水野先生の原画を手にしたとき、もう一つ決めたことがありました。この本を桐箱に納めようと。

    原画、最新の印刷技術を使ってお届けする他の絵も、永く美しい状態で保管していただくには、それこそ、日本人の知恵が結集した桐箱しかないと思ったのです。

    (箱義桐箱店 谷中店)

    そして今回、桐箱をお願いしたのが、東京都台東区にある明治元年創業の箱義桐箱店(はこよしきりばこてん)さんです。 https://hakoyoshi.com/

    ネット上には安価で桐箱を作っておられる会社さんもたくさんあるのですが、やはり、職人さんの顔が見えるところにお願いしたい、と思いました。 国内で流通している多くの桐箱はすでに中国で作られているものになっています。

    この伝統工芸が廃れてしまうか否か、今、そのギリギリの状態であることも知りました。

    ちなみに、こちらの箱義桐箱店・谷中店は、様々なアーティストが集い、水野先生と谷さんのご縁も生まれたという、「さんさき坂カフェ」のすぐそばにあります。

    https://www.instagram.com/sansakizaka/

    そして、以前からお二人が気になっていたお店だったそうです。

     

    店内には様々な用途に合わせて作られた箱が多数、整然と並んでいます。

    その様は実に美しく、背筋が伸びるような凛とした空気がここには流れています。職人さんの丁寧な手仕事の集積が、この空気感を生み出しているのだと感じました。

    ところで、近年まで「桐」は木ではなく「ゴマノハグサ」科に属する草の仲間とされてきたことをご存じでしょうか?

    だから、木と同じと書いて、「桐」なのです。

    しかし、ミクロなゲノム解析から被子植物の新しいAPG分類体系によって、桐はシソ目キリ科として広葉樹に分類されるようになったとか。

    スタッフの方に原本を見て、読んでいただいた上で、お願いできるというのは、とても大事なことだったと、今更ながら思います

    桐は湿度が高くなると膨張し、気密性を高めて内部へ湿気が侵入するのを防ぎます。また乾燥時には収縮し、自身の水分を放出します。雨の日に箱の蓋が開けにくくなるのはこのためだそうです。防虫・抗菌作用を持ち、平安時代から保存・保管の素材として使われてきた桐は、日本の気候風土に最も適した素材なのです。

    現在、本のサイズに合わせた桐箱を制作していただいております。

    試作品として出来上がってきた桐箱は、実に滑らかでどこか優しく暖かです。『神迎え』を納めると、魂がすっと宿ったように感じました。納めるべきところに大事なものを納めることができた、なぜかそう思えて、心底ほっとしたのでした。

    さて、次号ではより手にとっていただきやすい書林版についてご紹介する予定です。

    Japan Craft Book プロジェクト 代表
    稲垣麻由美
    official@japancraftbook.com

    ーつづくー