ブログ

  • 【vol.2】眼福の1冊を届ける。Japan Craft Book プロジェクト

    【vol.2】眼福の1冊を届ける。Japan Craft Book プロジェクト


    「眼福」という言葉があります。なんと日本人らしい感性から生まれた美しい言葉だろうと常々思っています。

    「福」を英語に訳すと、「good fortune」となるようですが、前号のメルマガでご紹介した『夜の木』という絵本は、まさに眼福の1冊。「世界を変える美しい本」と呼ばれていることを私は後になって知りました。美しさとは、良い運を呼び込み、世界を変える力を持つものかもしれません。

     

    Japan Craft Bookプロジェクトから生まれる本も、そんな、まさに眼福の1冊となればと願いつつ制作を進めています。「Craft」とついているのは、単なる読み物としてだけでなく、眺めていたい、触れてみたい、所持していること自体が嬉しい、そんな存在感を宿すものを目指しているからです。

     

    紙質にこだわり、職人さんの手が感じられるものにしたいと考えています。あらゆるものがどんどん電子化されている時代だからこそ、「感触」や「匂い」というようなものにあえてこだわりたいと思います。もちろん、紙の本派の人であっても、読んだらすぐに中古市場に廻してシンプルな暮らしを目指す人が増えている中、無謀な挑戦をしている、という自覚もちゃんとあります(笑)。

     

    だからこそ、美しいものでなければ残れない、とも考えています。

    一凛堂が所有している日本近代文学館刊の名著複刻版シリーズ。明治から昭和初期までの初版本はこんなにも美しかった。

     

    また、コロナや戦争など、不安ばかりが募る時代だからこそ、別世界へ誘ってくれるものが人間には必要で、暗く重い時代にアートが花開くことは歴史が証明しています。戦国時代に豪壮で華麗な障壁画が最も描かれたように、ヨーロッパでルノワールやモネのような明るくあたたかい絵が注目されたのが、長く戦争が続いていた時期だったようにです。

     

    そして、そんな立派なアートというものではなく、身近で手頃な「本」という形に美を詰めてみる、という試みは今の時代に合っている気がしています。手のひらに広がるささやかな眼福。ここ目指します。

     

    実は、このプロジェクトを思いついたとき、「和紙の本を作る」こと自体が画期的なことのように思っていました。でもそれは愚かなことで、よくよく考えるまでもなく、日本には明治時代に洋紙が入ってくるまで、和紙しかなく(当然、そんな言葉すらなく)、本といえば手漉きした紙の束を糸で綴じたシンプルなものだったのです。画期的なことどころか、もともとそうだった、という恥ずかしいお話です。

     

    しかも、その和紙というものは1000年も保つという驚異的な紙で、それゆえ、我々は今も1300年も前に記された正倉院の目録や空海の真跡だって目にすることができるのです。日本人はもっと和紙という誇るべき存在に注目すべきではないでしょうか。

    「日本の神様の物語を、日本の紙に綴る、描く」というコンセプトは、そんな思いから生まれています。では、「なぜ、神様の物語なのか・・・」というお話は次号にて。

     

    Japan Craft Bookプロジェクト 

    稲垣麻由美

    ーつづくー

    ※次号の配信は来週木曜日を予定しています。

    メルマガの新規登録はこちらからしていただけます。

  • 【vol.1】本気で始めます。 Japan Craft Bookプロジェクト

    【vol.1】本気で始めます。 Japan Craft Bookプロジェクト

    日本は資源が少なく、これまで誇ってきた技術力という面においても世界で遅れをとり、日々焦燥を感じざるを得ません。ただ時代は、優位性より「協調」と「対話」に重きを置く流れとなっているとも感じています。今はまさにその変革期。さまざまな混乱が生じ、悪しきことが膿のごとく溢れでてきているのではないでしょうか。

     

    そして、そう遠くないうちにやってくる新たな時代に向け、精神的リーダーとなりうるのが、森羅万象に八百万の神を感じ、神仏習合の中で培われてきた受容の精神を宿す日本人ではないかという期待を私は密かに持っています。調和と協調、余白の美を直感的に感じられるセンサーはこれから重要なものとなっていくはずです。

     

    さて、私は2020年にインドのタラブックスが制作した『夜の木』という絵本に出逢いました。そのときの衝撃を昨日のことのように覚えています。

     

    インドの少数民族・ゴンド族に語り継がれている森の精霊にまつわる物語を描いた極彩色の絵。それを古布から再生した独自の黒い紙にスクリーン印刷し、手綴じした完全ハンドメイドの本の裏面にはシリアルナンバーが施されていました。その佇まいは実に美しく、触ると温かみがあり、いつまでも眺めていたい、そして、その本を所有していること自体が嬉しくなる、そんな絵本だったのです。  

     

     

    この本は世界中にコレクターがいて、中古本は値が下がるどころかどんどん値が上がっていっています(日本語訳も10刷となっています)。長らく出版業界にいる私にとっては、いかにトレンドに沿った著名人の売れる本を制作するか、が常識となっていましたが、インドのタラブックスはその真逆の本作りをしていたのです。

    そして、「インド独自の文化や精神性が宿る美しい本が存在しているなら、日本独自の美しい本、日本の精神性を宿した本をつくりたい」と強く思ったのです。

     

    また、以前より親交のあった和紙総問屋の方より、「最近は伝統工芸の仕事に関心を持つ若い人が増え、職人になりたいと門を叩く人も結構いる。けれど、実際は商品を作っても需要がなく、人を育てる余裕がない。職人はどんどん高齢化し、伝統を継承していきたいのに本当に困った状況が起きている」との話を伺っていました。それなら自分は、その需要を作る側にまわりたい、と常々思っていたのですが、それが『夜の木』と出逢ったときに、「日本の伝統工芸(和紙)」×「書籍(絵本)」という発想に結びついたのです。

     

    読み終えたらすぐにリサイクル市場に出されるような本ではなく、「所持していることが嬉しくなる本」「一生大切にしたい本」「買うことが伝統工芸の支援につながる本」づくりを目指し、ぜひご一緒していただきたいと思った方々にお声をかけ、「Japan Craft Bookプロジェクト」を立ち上げました。

     

    「Japan Craft Book」という言葉がやがて世界で一人歩きしていくように進めて参ります。なお、このプロジェクトはさまざまな人の輪が広がってこそ、より良き方向へ向かうと信じています。ともに愉しんでみたいという方、ご連絡ください。よろしくお願い致します

     

    Japan Craft Bookプロジェクト 

    代表  稲垣麻由美

     

    【追記】

    この『夜の木』は、2008年のボローニャ・ブックフェアで、優れたデザインの本に贈られるラガッツィ賞を受賞しており、世界を変える美しい本、と呼ばれています。


    繰り返しになりますが、この世界観を日本人の感性でつくってみたい。日本の美意識と伝統工芸(職人技)を掛け合わせて、富裕層しか手が届かない美術品や工芸品ではなく、だれもが手に取りやすい「本」というプロダクトに集結させてみたいのです。

     

    ーつづくー

    ※次号の配信は来週木曜日を予定しています。

    メルマガの新規登録はこちらからしていただけます。ぜひ、ご登録ください。

  • Japan Craft Bookプロジェクトのメールマガジンが始まりました。

    Japan Craft Bookプロジェクトのメールマガジンが始まりました。

    昨年より構想してきたJapan Craft Bookプロジェクトをついに公開し、
    メールマガジンの配信をスタートいたしました。
    
    稲垣が筆を取り、Japan Craft Bookプロジェクトにかける想いと新着情報を毎週お届けいたします。
    取材風景や工房での制作過程などもお楽しみいただけます。
    
    本やアート、伝統文化にご興味をお持ちのご友人、お知り合いの方に、
    こちらのメールマガジンをご紹介いただけますと、大変励みになります。
    
    現在ホームページを鋭意製作中でございます。
    公開までの間、バックナンバーを当ページにてお読みいただけます。
    
    新規登録はこちらからしていただけます。
    ぜひご一緒に愉しんでいただけますと幸いです。